私たちおたばぶは、どちらもフリーランスだ。
私はフリーのライターだし、おたよりさんの本業はWebコンテンツとは無縁の業界に身を置いている。関係してきたクライアントもかなりの数だ。
そんなおたばぶに、まむしさんの往復書簡から、こんなパスをいただいた。
ほんと、さまざまな感想をいただき、自分に無かった視点も多くて勉強になる。
— まむし🐣編集者の生存戦略 (@mams428) February 5, 2023
逆に、ライター目線で見る「いいクライアントの見極め方」みたいなのも考えてみたいと思ったりした。 https://t.co/R1biSRaM2b
ということで、フリーランスとして生き延びているおたばぶ二人の、クライアント選びの一例を紹介しよう。
ただし、すべての業界、すべてのフリーランスに当てはまるわけではない。
読んでいるあなたが真似をするときは、あくまで参考に留め、自分のスタイルに落とし込んで欲しい。

シンプルに、納期、本数、費用、レギュレーションが決まっていて、機械的にこなせばいいクライアントは、飯の種として安定しているいいクライアントだ。
定期的にベーシックインカムになり得るクライアントは、フリーランスとしてある程度安定して生きていくために大事にしておきたい。
見極めポイントはシンプルで、こういうクライアントの多くが、Web製作のなんたるかをよく知っている、中規模から大手のWeb製作会社や広告代理店だ。
単発の仕事をいくつかこなしていくうちに、「こいつは使える」と判断されれば、中長期の案件にアサインされることが増える。
この手のクライアントに対しては、突出して優秀なユニットである必要はない。使い勝手のいい歯車として、リズムよく動くことのほうが大切だ。
しっかりとスケジュール通りに、レギュレーションに沿った仕事をすることで、覚えめでたくなる。あとは大手企業が多いエンドクライアントに提案しやすくなる肩書きや資格があれば、なお良しだ。
基本的に交渉の余地はない。スケジュールやレギュレーションはエンドクライアントの意向を反映したものだし、原稿料はエンドクライアントの予算に粗利率を掛けたものが降りてくる。
代わりに、忖度も必要ないし、エンドクライアントとの調整も不要だ。依頼された分野において、専門性を持ったSEOライティングをするということ以外は、なにも求められない。
扱いやすい仕事をくれる、まさに飯の種だ。どれだけライターとしての理想像を掲げようとも、飯が食えなくては話にならない。工数を下げて安定した案件を回せるクライアントを、数件確保しておこう。
どこに応募すればいいのかわからん、教えてくれ!!って人は、とりあえずサクラサクマーケティングの「カカセルエディター」あたりからどうぞ。
別にサクラサクの回し者じゃないし、紹介キャンペーンも終わってるんで、紹介したところで私はなにひとつ!!得られるものはないんだけど!!
私がライター初期にお世話になったのと、比較的大きな広告代理店や、大手企業の案件が多かった印象。

支払った費用以上を回収というと「対価以上にライターをこき使うクライアントか!?」と誤解を受けそうだが、納品されたコンテンツに対する姿勢の話だ。
費用を掛けて作られたコンテンツや、ライターの持っているノウハウ、メディア運用の知識と経験値など、自分たちが持っていないノウハウを積極的に吸収しようとするクライアントは、いいクライアントだ。
広告代理店を使わない企業と直接契約をすると、こういうクライアントに出会う機会がある。
最初はまったく知識もノウハウもないので、要件の取りまとめやヒアリング、すり合わせに苦労するが、二人三脚の体勢に持ち込むことで、しっかりと長いお付き合いになっていく。
見極めポイントは、ヒアリング時の姿勢だ。
つまるところ、謙虚で勤勉なクライアントであるということだ。
外注を使う事を投資として考えているクライアントは、基本的に金払いがいい。
いい仕事をして貰うには金が掛かることをよく知っているし、掛けた金を育てて回収する必要があることも理解している。
最終的には社内にノウハウが蓄積されることで、内製化するなり更に取引先を広げるなり、クライアントが次のステージへ進むときが来る。
結果として、ライターと発注者という関係は終わることもある。ただ、信頼を勝ち得ていれば、アドバイザーやコンサル的なポジションとして残ることもあるし、別のクライアントを紹介されることもよくある。
いつまでも最前線に立って、一兵卒のライターとして走り続けるのは、正直に言って厳しいし単価にも限界がある。
このゾーンのクライアントを増やすことで、最終的にはコンサル料をある程度のベーシックインカムにしていくのがおすすめだ。

捕まえるのが難しいが、一度深いコネクションができたら安泰なのがこのタイプ。
Web製作会社や広告代理店から独立したり、転職した人は、元の古巣とのつながりが強く深いことも多い。コネクションを元に案件を引っ張って、自分が厳選した手札であるライターやカメラマンなどに割り振るので、その手札に潜り込んだら勝ちだ。
見極めポイントというほどでもないが、広告代理店や製作会社を通じて仕事をするとき、担当者をよく見ておこう。
前述の通り、エンドクライアントのご意向がすべてになりがちな業界だが、制約の中でもエンドにとってのベネフィットを最大化する努力をしている人がいるはずだ。
そういう人は、多くのエンドクライアントとのコネクションを丁寧に育てている。
こういうクライアントとつながるには、変に媚びる必要はないが、エンドクライアントにとって最良の提案になれるよう、常に自分を磨いて価値を見せつけておく必要はある。
良質なエンドクライアントを抱えるディレクターの、厳選した手札として手元に残して貰うためには、常に自分が最良で代替を探すのが難しい存在である努力を続けなければならない。
苦しいが、まあまあ楽しい。なお私は、おたよりさんという強い味方を引き込むことで、「ディレクションができる編集・校閲が付いてくるライターなんて、ほかにいないでしょう?」という裏技を使っている。いーだろー。
一方で、おすすめできないクライアントもいる。紹介していこう。
ピンハネ案件の募集が中心
広告代理店の下は、大体中小の製作会社が二次請け、ライターは三次請けあたりだ。フリーのディレクターは二次請けか三次請けあたりにいることが多い。下へ降りてくるほど納期は短く、単価は安くなる。
もちろん、元請けとして案件を差配するライターやディレクターもいる。
そんな中に紛れ込んでるのが、自称ディレクターだ。ディレクションせずに、右から左へ受け流しながらピンハネするだけの存在。
自分で募集しておいて、記事の掲載先はわかりません!なんてこともあるから、ホントとんでもない。
SNSやクラウドソーシングで、びっくりするほど安い単価で出されている仕事には、この手の案件が多々紛れ込んでいる。
シンプルに、単価が1円未満の仕事は請けなければ避けられる地雷でもある。
金払ってるんだから言うことを聞け!
悪い意味で我の強いクライアントだ。
こっちは金を払ってる立場なんだから言うとおりにしろとばかりに、スケジュールはめちゃくちゃ、修正指示はぐちゃぐちゃ。それで成果が出なければお前のせい。
ホントにいるの?と思われるようだが、実は結構いる。しかも、中小企業に限らない。そこそこ名の知れた会社相手でも起きる。
自社愛や製品愛が強すぎて、納得するまで修正させちゃうモンスター化した広報、完璧主義の社長、なんかすごい成果が出るって保証してくれなきゃやだやだ言い出す営業…かなりいる。
これも割と見分けが付きやすい。プロフェッショナルとして外注している相手に対し、上下関係を持ちだして、具体性や意味のない、一貫しない指示を出してくるパターンが多い。やけにやたらと即効性と費用対効果に言及するのも特徴だ。
お前がわかるなら、お前がやればいい。一回だけのお付き合いと割り切って、素早く逃げよう。
あれもこれもそれもお願い!予算?ない!
予算を増やさないまま、外注に全部盛りしてくるタイプのクライアントもタチが悪い。
ライターを万能ジョブだと思ってるのか、デザインして!コピー作って!写真も撮って!レタッチもして!マーケもやって!と、ライティングの費用の中に悪気なく全部積み上げてくるクライアントに遭遇することはままある。
大原則として、ライターに書くこと以外を求めるなら、ライターは全部の工程に別途費用を要求していい。
自分のできる内容だけ巻き取って見積もりを渡して、他はよそへドウゾでOK。そもそも全部いい感じによしなにやって欲しいなら、払う金を払ってWeb製作会社なり、広告代理店に依頼すればいい。
これとこれとこれも頼めます~?って聞かれたときに、追加費用かかりますよと返事をして、不満げにしていたら離れればいい。
払うモノ払ってくれるなら、それは普通の上客だ。大事にしよう。自分ができそうにない分野については、Twitterなんかで案件紹介して、横を広げていこう。
いいクライアントを見付けたら、細く長く深く繋がることを意識するのがおすすめだ。一気に深く太く繋がると、収入の柱を一カ所に依存してしまうことになる。
フリーランスは一カ所に収入を依存すると危険だ。長く仕事をしているライターは、複数の取引先を持っている人がほとんどだろう。
いいクライアントといえど、絶対とはいえない。なんらかの事情で関係が途切れることもある。備えあれば憂いなし、いいクライアントを見付けたら丁寧に囲い込みつつ、深く依存しすぎないように意識しながら良好な関係を築いていこう。
あと、私は常々同じジャンルのフリーランスは全員ライバルと言っているが、だからといって敵ではない。
キャリアパスの選択によっては、ライターからディレクターへ、あるいは編集へと進む人もいる。日頃からほんのりとした同業との付き合いも大事にしておこう。